照らされるエモーション

ご存知、みよしです

浅草ロック座「EARTH BEAT 2020 1st」

※この記事は2020年7月16日にnoteへ投稿した記事を再掲したものです

 

浅草ロック座「EARTH BEAT 1st」を観に行きました。
毎夏の恒例となっているEARTH BEAT(通称アスビ)は「世界各国のダンス」をテーマにした演目で、様々な国の伝統的なダンスをショーとストリップで魅せてくれます。

 

 

 ※以下の感想は鑑賞後の方向け&2nd公演のネタバレを含みます
出番 / 名前(敬称略) 【モチーフとなったダンス / 国】 

 

1景 早瀬ありす【カリンカ / ロシア】

「ダッ!ダッ!ダ!」のイントロを聞くだけで一気にテンションがぶち上がる恒例のカリンカ。ロシアの民族衣装、サラファンを着た踊り子さんオールスターズに、いきなり目が足りなくて嬉しい悲鳴。
衣装のブラウス、首からかけたチロリアンテープ、ポンポン菊いっぱいの頭巾など、踊り子さんによって配色が違って可愛い〜!もし浅草ロック座の衣装展があったら、一度近くでじっくり観てみたい。

 

ベッドショーでの白いドレスが清楚で、婚礼のイメージに合わせているのかな?と思いました。

早瀬ありすさん、小柄でお顔がめちゃくちゃ可愛くて、黒曜石のように艷やかな瞳がすごく好き。胸元をはだけるとき、一瞬顔を背ける姿に見てはいけないもの感があって、ドキドキしました。そして触れたくなるような柔肌。ビシッとしたブリッジの力強さと、ポーズを切られて拍手をしながら「あー今ストリップを観ている!」という喜びで、胸がいっぱいになりました。

鑑賞歴は浅いのですが、1景を担当されることが多いイメージがあって、これまで浅草で観た「TO」のポップさ、「PASSION」での可憐さに加え、今回はクールで凛とした魅力もあり、演目によって全然違った表情をされるところも素敵だなと思います。

 

2景 橋下まこ【ワヤン・クリ / インドネシア

暗転した本舞台に流れるガムランの神秘的な音楽に、人形をつかった影絵芝居ではじまる2景。ワヤン・クリはwikiによると「インドネシアのジャワ島やバリ島で行われる、人形を用いた伝統的な影絵芝居、またそれに使われる操り人形のこと」だそう。

 

明転してダンサーズを率いた橋下まこさんは堂々たる貫禄で、奇抜な衣装さえも着こなしてしまう。王冠のような髪飾りやシャラシャラした装飾は遠目に観ても豪華でしたが、それに負けないお顔の華やかさとスラッとした手足がめちゃくちゃ映える景でした。

 

影からの光と音楽の演出もすごく印象的でしたが、群舞の美しさに加えて、花道に縦列した5人の振りが千手観音像のように見えるシーンがあり、金・黄色基調の衣装と相まってひたすらに神々しかったです。普段は盆に近い左右席で観ることが多いのですが、少し遠くても最初に正面で見れてよかった。

 

その後上半身裸で登場したまこさんの、神仏の顕現に近い美しさに思わず息を呑み、ベッドショーでは腰の装身具(裳(も)や裙(くん?)が照明で様々な色を放つのもすごく綺麗でした。

橋下まこさんの美脚はもはや芸術品の域だと思うんですが、ピアノの音階に合わせて上下する脚は美しい扇を連想し、付け爪をそっと噛む瞬間は顔の小ささがより強調されて、目線の妖しさが蠱惑的にも見えました。

 

「SOB」の満面の笑みで客席を盛り上げる姿がすごく好きだったので、まこさん自身は静かめの演目が好き、というの個人的にすごく意外で(6月25日のTwitterより)。もうすぐデビュー2周年だそうですが、これからも沢山まこさんのステージを見たいなと思いました。

 

3景 武藤つぐみ【セマー / トルコ】

過去の「EARTH BEAT」公演で伝説とも称される景「セマー」。こちらもwikiによると「メヴレヴィー教団(旋舞教団)のスカートをはいた信者が音楽にあわせて、くるくると回転をし踊るという宗教行為(セマー)。これは祈りの手段であり、回転は宇宙の運行を表し、回転することで、神との一体を図る」とあります。

 

YouTubeで『まわる、おんな ~Turn of Woman~』を観たことはあったものの(現在は非公開 / また観られる機会があると良いな)はじめて劇場で観るセマー。武藤さんはほっかむりのような白い布を頭に巻き、上半身裸でボリュームのある白のロングワンピース。

 

左右二方向から射し込むスポットライトに照らされて、焚かれたスモークが雲のように揺らぎ、武藤さんは大空を上昇するように落下するように、最初はゆっくりと、徐々に激しく回転を続けていく。くるくるくるくる、ぐるぐるぐるぐる、ぐるんぐるんと回転を続け、白のロングワンピースはふわふわと風になびいて一輪の花のようにも見えた。

回転しながら花道を移動する武藤さんの足取りは一切ブレず、三半規管って鍛えられるの?という気持ちに。

 

音楽の静けさと肉体の激しさが同居した景で、花道を通り影絵のように消えた一瞬後、荘厳な青の照明に照らされる光景が大好きでした。幸運にも最前席で観る機会もあり、武藤さんが起こす涼しい風までも伝わってきて、とても貴重な体験をしました。 

 

私はここ1年ほどしか知りませんが、踊り子6周年、本当におめでとうございます!浅草ロック座「Dream On」で武藤さんを知り、そこからどっぷりとストリップ鑑賞にハマったこともあり、私にとって武藤さんは特別な踊り子さんで、推しです。なので少し長くなります……。

 

今回、初めて武藤さんに手紙を書き差し入れをしたのですが、そのなかで自分なりに「推すこと、ファンでいること」を考え続けていて。結論から言うと「推すことは祈ること」だと思いました。

武藤さんが踊っている姿を見つめながら「いま武藤さんが何を祈っているのか」を想像して、世界に蔓延する疫病が治まりますように、かもしれないし、差し入れにお酒がいっぱい届くといいなぁ、かもしれない、とぼんやり思いました。直後に「祈りが何であっても、それを応援したいな」とも。

 

「武藤さんの祈りが叶えばいい、と願うのが私の祈りだ」と思いました。そう思い至った瞬間、急に泣きそうになってしまい、涙で滲む目をなんとかこじ開けて、武藤さんの祈りを見続けました。「祈ること」の尊さを感じられる景でした。

 

4景 矢沢ようこ【アンダルシア / スペイン】

情熱的なフラメンコのリズムに合わせ登場したようこさん。スーツ姿にシルクハットの男装、前半はポニーテールでしたが、後半は長い髪を下ろし色っぽい姿に。このクールからセクシーへの振れ幅にまず痺れました。音楽が変わり、ようこさんは上半身裸になると黒地に鮮やかな小花柄のストールを手に、盆の中央へ。

 

置かれた椅子に腰掛けたようこさんが移動盆で花道を通る際、手遊びするシルクハットをまるで男性に見立てているように思え、グッと色気が増すのを肌で感じました。

照明にあたって茶色に輝く髪に、スカーフの長いフリンジが重なって本当に綺麗で、ようこさんの奥には浅草ロック座名物のミラーボールが光り輝き、「ミラーボールを背負うのがこんなに似合う人はいない」と思ったのが強く印象に残っています。

 

右の二の腕に黒のリング、左太ももの赤いガーター(回によっては黒の時もあった)、下着は黒で足元は真っ赤なハイヒール、口紅。情熱であり情欲であり愛をイメージさせる赤と、それを際立たせる黒で統一された世界観に痺れました。

 

目線一つ、指先一つで持っていかれそうになる引力が物凄くて、人間の喜怒哀楽と女の情念が詰まった、観るたび好きになって圧倒される景でした。その一番外側を包むのは「愛」だと体現するようなステージ。ここで流れるラテンポップも大好きな曲になりました。

 

ようこさんが出演されている映画「彼女は夢で踊る」(関東は2020年秋公開の予定)ポスターがロビーにばばんと掲示されていました。新宿武蔵野館での公開も楽しみ!絶対観に行きます。
関連インタビュー:広島発“女性が涙する”映画 現役ストリッパーが語る舞台裏|日刊ゲンダイDIGITAL


【中休憩】

10分間の中休憩では、次回公演「EARTH BEAT 2020 2st」(7/20まで開催中!)の予告と、各景の踊り子による今回の演目紹介がありました。
2ndのみおり舞さん、小室りりかさん景で見切れる武藤さんを食い入るように観ちゃうので、まったく休憩にならない。
演目紹介では、各国のダンスの背景が簡潔に分かりやすく説明されるので、帰ってから調べてまた観に来るのも凄く楽しかったです。まこちゃんの叫びと◯リオのインパクト(笑)。


5景 川菜ひかる【オクトーバーフェスト / ドイツ】

毎年ドイツのバイエルン州ミュンヘン市で9月から10月にかけて開催される、世界最大のビール祭り、オクトーバーフェスト。沢山のビールとソーセージが振る舞われ、多くの人が「Prost!(乾杯)」する、賑やかなお祭りの雰囲気そのまま、とにかく元気になれる景!

 

川菜ひかるさん・清水愛さん・ダンサー2名は赤を基調としたウェイトレス姿(ビールガール)で、 琴井しほりさんが青年役でした。

川菜さんが琴井さんに手振りを教えてあげるのが可愛くて、にやにや〜と見てましたが、なんと後半の振り真似の伏線でした。上下の動きにしか自信を持って参加できないのは〜どこのどいつだぁ〜い?アタシだよっ!(ドイツだけに)

 

川菜ひかるさん、賑やかで楽しい景の雰囲気に弾けるような笑顔がマッチしていて、とにかく可愛かったです。私もこんな子にビール注がれたいよ〜!
ベッドショーの衣装もお似合いで、ショッキングピンクフレアスカートが超可愛く、黒のコルセットを時々上げる仕草も好きでした。4曲目のサビと「ウッ!ハッ!」の川菜さんの動きは思わず体がリズムを取ってしまう。

 

これを機に和訳付きの動画を観たら、ビールじゃなくウォッカを飲んでいて、まあお酒はなんでも美味しいもんね!と寛大な気持ちに。早くProst!できる世になりますように。


6景 清水愛琉球舞踊 / 日本】

琉球舞踊は宮廷芸能として、琉球王国時代に中国からの使者(冊封使)を歓待する舞台で踊られたことを機に発展した文化で、国の重要無形文化財にも指定されています。今更ですが、アスビはこうして色んな国の歴史をより深く知れる機会になるのも魅力ですね。


清水愛さんを中央に、早瀬ありすさん・矢沢ようこさんが踊る姿はとても優雅でした。楽曲との相性も素晴らしく、たおやかな時間に身を委ねて「これがウチナータイムかあ〜」という気持ちに(違います)。


3人は花笠を被り、沖縄の伝統的な染織である紅型(びんがた)模様の色鮮やかな着物姿(愛さんが黄、ありすさんは桃、ようこさんは青緑?かな)。花笠は蓮の花をモチーフに、太陽の赤色と海の青色をイメージしたデザインだそうです。手には三板という打楽器を持ち、曲の合間に軽快な音を響かせます。


ベッド着は花のついた黄色い薄手の襦袢でしたが、足袋まで着込んだ姿から露出度の高い衣装は余計にドキドキ。

遠くを見つめる眼差しはどこまでも優しく、盆では雲の上に乗った軽やかな天女のようでした。さらりと動かれていますが、上半身と下半身があれだけ別々の動作をできるのは、きっと鍛え上げられた肉体の賜物で、天女のようであり人間でもある不思議な魅力を感じました。
最後の曲は初めて聴いたのですが、歌詞がとても響いて、清水さんの優しい雰囲気にすごく合っていて素敵でした。心が洗われるような景でした。

 

7景 琴井しほりオリタヒチ / タヒチ

タヒチアンダンスは、映画「フラガール」でもお馴染みですが、タヒチポリネシア諸島に伝わる伝統舞踊でフラダンスの原型とも言われています。オリタヒチとはコミュニケーション・人に何かを伝えることを意味するそう。


衣装は健康的なココナッツブラ、白のモレスカート、手にはイイというタッセルを持ち(メインの琴井さんはスカートもイイも青)、首にはハイビスカスのレイと、南国感に溢れた景でした。2景ではアルカイックスマイルだった橋下まこさんが、ニコーッとした満面の笑みだったのに目を奪われました。というかみんな可愛かった〜!なんせ目が足りない……。


バンブーダンスをステップでかわしながら踊る姿は楽しげでしたが、足を挟まれてしまわないかソワソワしちゃいました。踊り子さんはみんな運動神経が良いから、そんなミスは起こらないのだった。

海を思わせる大きな青い布が寄せては返すさざ波のようでもあり、人を飲み込む巨大な荒波にも見えて、海の美しさと恐ろしさ、両方を感じられる演出で好きでした。 

琴井しほりさんは今回がデビューにして、トリの大抜擢。ストリップへの並々ならぬ思いはインタビューでも語られていましたが、その生真面目さが伝わるような丁寧なステージでした。

白魚のような肌の白さと清楚なお顔立ちで、ニコッとした笑顔がすごく可愛らしかったです。ベッド4曲目でかなり大胆なポージングがあったんですが、琴井さんだからこその品と落ち着きがあって、また出演して欲しいなと思いました。

 

浅草ロック座へ立つことへ並々ならぬ緊張と気合いがあったと思うのですが、日を追うごとに柔らかい表情になられていき、琴井さん自身もステージをどんどん楽しんでいらっしゃるんだなと、観ているこちらも嬉しくなりました。(琴井さんは7月2日のTwitterでも思いを語られています)

関連インタビュー:(最初の画像がエッチなので背後にご注意ください)

フィナーレ【キューバ

浅草ロック座のフィナーレは毎回すごく楽しくてテンションがブチ上がって、その興奮のまま帰路に着くのですが(そして眠れないのですが)今回も本当に賑やかで楽しいサルサダンス!

衣装は2018年アスビ公演でのこれと同じ?リオのカーニバルを思わせるド派手な衣装。


 皆さん露出度高めなのですが、推しの武藤つぐみさんの高いヒールから伸びる、すらっとした美脚をまじまじと見てしまいました。なんせ目が足りない……。(2回目)

踊り子紹介は橋下まこさん。聞き取りやすく明るい声で、いつもと少し違ったメッセージを下さいました。かけがえのない日々を、刹那の煌めきを逃さないように、これからも元気でいましょう。そして劇場へ行きましょうね。


おわりに

悪い意味で世界が変わってしまい、そんな中で自分の好きなものに心を励まされた3ヶ月間だったなと思います。

初めて差し入れをしたり、ファンとしての自分のスタンスが定まった公演だったこともあり、ストリップ鑑賞歴としては1年と少しですが、初めて感想記事を書くことにしました。

 

書いているうちに記憶が蘇ってどんどん筆が進み、国やダンスの歴史を調べる楽しさもあり、ついつい長くなってしまいました。改めて、人は踊ることで感情を表してきたんだな、と歴史に思いを馳せました。

 

3景の感想の中に書くには少し毛色が違うため外しましたが、「祈り」という言葉から連想した、舞城王太郎好き好き大好き超愛してる。」の書き出しが今の世界の現状に対する切実な言葉だと感じたので、最後にこちらを引用して終わります。

 

愛は祈りだ。僕は祈る。僕の好きな人たちに皆そろって幸せになってほしい。それぞれの願いを叶えてほしい。温かい場所で、あるいは涼しい場所で、とにかく心地よい場所で、それぞれの好きな人たちに囲まれて楽しく暮らしてほしい。最大の幸福が空から皆に降り注ぐといい。


舞城王太郎好き好き大好き超愛してる。